子どもが生まれる前の僕には、
「主夫になる」という選択に、少し抵抗があった。
「男は仕事をがんばるものだ」
そんな言葉を、誰かに直接言われたわけではない。
でも、僕が育ってきた時代には、そういう空気が確かにあったと思う。
男尊女卑、とまでは言わないけれど、
男は外で働き、女は家を守る――
そんな価値観が、まだどこかに残っていた時代。
僕もいつの間にか、その固定観念をインストールしちゃっていたんだと思う。
だから、最初から「主夫になろう」と決めていたわけではなかった。
――――
その頃の僕は、正直に言うと、挫折していた。
当時、仕事がうまくいかず、気づいたら燃え尽きていて、
「これから何をしたいのか」がよく分からなくなっていた。
心の“HP”もずっと赤点滅。
なかなか回復できず、へばっていた。
一方で、パートナーは昼夜問わず働く助産師。
忙しさも責任の重さも尋常ではない仕事なのに、
彼女はそれを「天職だ」と言っていた。
その言葉を聞くたびに、僕は尊敬しつつ、
同時に心のどこかで、
「おれはなんなんだ…?」
と自問自答を繰り返していた。
――――
そんな中で、僕は「主夫」という道を選んだ。
決して、最初から胸を張って選んだわけではない。
「主夫」という言葉を口に出すたび、どこか他人事のように感じていた。
それでも、
・やりたい仕事が見つからなかったこと
・パートナーが自分の仕事に誇りを持っていたこと
・そして、これから生まれてくる子どものこと
それらが重なって、
「一旦、主夫としてやってみよう」
と、ひとまず動き出してみることにした。
そして、できるだけ準備をしておこうと思った。
いま振り返ると、それは勇気というより、
新しいダンジョンに足を踏み入れる前に、
とりあえず装備だけは整えておこう――
そんな、少し不安で、少しワクワクした気持ちだった。
その“準備”こそが、
僕にとっての次の冒険の始まりだった。

