初めての育児は、もう10年くらい前のことになる。
ちょうどその頃、 世の中では「イクメン」という言葉が広がっていた。
イクメンはかっこいい。
イクメンはえらい。
育児するパパ、素敵。
なんだか、すごくキラキラした言葉だった。
たしかに、僕は育児をしていた。
いわゆる「イクメン」だったんだと思う。
でも、全然キラキラなんてしていなかった。
赤ちゃんをあやしたり抱っこしながら、
洗濯が終わって洗濯機を開けたら、
吸水ポリマーまみれの洗濯物。
そこでおむつが紛れていたことに気づいて絶望したり、
離乳食が飛び散るのを気力のない目で見つめていたり、
睡眠不足で頭が回らず、
やることはたくさんあるのに思考停止していたり…。
前に書いた、
『イスをぶん投げて開けた壁の穴』 がふと目に留まり、
いっそほじくって広げてやろうかとも思っていた。笑
今思えば笑えるけど、
当時はまったく笑えなかった。
パートナーがメインで仕事をしていたから、
子どもと二人で出かけることも多かった。
ある日、エレベーターで ぐずっている子どもをあやしていたら、
乗り合わせたシニア男性にこう言われた。
「やっぱパパじゃダメなんだよな。 ママがいいんだよな」
無視したが、
内心は『おまえ、何様だよ』 と、
はらわた煮えくりかえっていた。
別の日、子どもの予防接種に行った時のこと。
怖くて泣いている子どもを抱きしめていたら、
看護師さんが、子どもに向かってこう言った。
「パパがやれって言うからやるんだからね~。ごめんね~!」
はい、もうこの病院には来ない!決定!
他の病院探すわ!
と心の中で叫びながら退室。
その人たちには悪気はなかったかもしれない。
でも、 『自分はそういう言葉を使わないようにしよう』と勉強になった。
『おかあさんといっしょ』のお兄さんお姉さんたちから画面越しに元気をもらい、
「負けねぇぞ…」と踏ん張った。
まだ「主夫」という言葉も珍しくて、
居場所があるような、ないような時代。
振り返ってみると、
あの頃の僕は、 「大変」という自覚がなかった。
必死すぎて、 比べられて、 意地になっていて。
自分のことに目を向けることを忘れていたんだと思う。
本当に『大変だったんだ』と気づいたのは、
ずっと後になってからだったなぁ。
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